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》思っても見なかった戦争の一面:映画『ジャーヘッド』鑑賞記

2023.11.16

1990年8月、イランのクウェートへの侵攻とともに始まった湾岸戦争に、海兵隊員(ジャーヘッド)の斥候狙撃兵として派兵されたスウォフォードの体験記を元にして描かれる、とある兵士の見た真実の戦争の一面が意外過ぎた、というブログ。



代々海兵隊員という家系に生まれたアンソニー・スウォフォードは18歳でやはり海兵隊に志願。厳しい訓練を耐え抜いた末に海兵隊の斥候狙撃部隊に配属され、2年後に起こった湾岸戦争のため中東へ派兵されたスウォフォードはサウジアラビアに駐留。そこで訓練するばかりの毎日に疲れ果て、次第に精神的にも追い詰められていく戦争のある一面を見ることが出来ます。




《『ジャーヘッド』のあらすじ》



海兵隊員のスウォフォードは厳しい訓練を経て、斥候狙撃隊に配属される。


1990年、部隊は湾岸戦争の勃発によってサウジアラビアへ赴く。


だが、敵に遭遇することもない退屈な日々が続き、

行き場のない戦争への士気はストレスとなり、彼らの精神を蝕んでいく。







この作品の監督は『007スカイフォール』や『007スペクター』、同じく戦争映画では『1917』も手掛けているサム・メンデスで、人間の内面やリアリティーにこだわった作品作りで有名。その主演でスウォフォードを演じているのは演技派の実力俳優ジェイク・ギレンホール。出演作は数多いジェイク・ギレンホールですが戦争映画に出演したものは少なくて、しかも体験した本人の手記を映画化していると聞いて鑑賞してみました。




【戦闘もなく敵も居ない戦争の先にあるもの】

通常戦争映画といえば敵と対峙する戦闘シーンなど、いわば殺しあうという戦争の本質を捉えたものが多いですが、この映画には一切なし。クウェートへ侵攻して傀儡政権を作らせて国土を編入させてしまおうとするイラクに対し、国連の武力行使容認決議を受けて8月に多国籍軍がサウジアラビアへと派兵したものの、イラクが「人間の盾」として多くの外国人を監禁したため長い駐留をすることとなった時間を、兵士の目線から描いています。



厳しい訓練の末に意気揚々と戦地へと赴いたはずの兵士たちが、その状況も知らされないままにサウジアラビアに駐留した半年もの間、ただ訓練だけを繰り返すばかりで暇を持て余します。いつ戦地へ送られるかも分からず、次第に落ちてくる士気に精神状態を削られていく彼らに出来ることといえば、故郷に残した彼女が浮気しないか心配することや自慰行為くらい笑。やっと向かった戦地は火を放垂れた油井からの煙で油だらけで、どこにもすでに敵は居らず。そんな中で友軍機から誤爆を受けたり、犯罪歴のある兵士や現地人の遺体を集めるなど精神的に疑われるような兵士の行為も見られて、彼らはさらに追い詰められていきます。




持て余した力を発散したクリスマスパーティーで火事を起こした結果、スウォフォードは降格に




実際の戦闘では彼ら歩兵の出る幕はなく、航空機からのミサイルや精密爆撃が主役。


命令を受けて狙う敵将校の狙撃許可まで降りていたのに、目の前で航空機による攻撃に手柄を取られて陸軍士官に対して怒り狂うスウォフォードは、きっと精神状態の極限に達していたのではないでしょうか?そのまま湾岸戦争での戦闘は4日間で終了し、結局一発の銃弾さえ敵に向けて撃てなかった彼ら兵士は空に向けてその弾丸を乱射します。



その後無事に故郷に帰り、彼女と平和な日々を暮らすスウォフォードでしたが、時折見せるその虚ろな目線はあの日のまま。その先にはきっと毎日見続けた砂漠が広がっているんじゃないかと思えるし、彼らの戦争は始まらなかったというだけじゃなく今だに終わってもいないのではないでしょうか?







そういった意味ではある意味、これも一つの戦争の愚かしさを描いた反戦映画とも言えるのかもしれません。





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