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》繋ぐべきものは芸か、それとも血か?:映画『国宝』鑑賞記

2025.07.31

公開が始まる前からその出来栄えは噂になっていて、実際に上映されてからは更に評価が高まっていたこの作品は、子供の頃から歌舞伎一筋に生きてきたものたちが何を犠牲にして何を得たのか?そして彼らが本当に欲しかったものは何だったのかを3時間でギッチリと描き出した、素晴らしい作品でしたというブログ。



今ちょうどNHKの大河ドラマ『べらぼう』での蔦屋重三郎役が好評の横浜流星と若手俳優の中でも実力派として知られる吉沢亮の2人が、クランクインの1年半も前から役作りに集中していたと話題になっていた当作。予告などの出来からも邦画にしては妙に気に掛かって、この作品はスクリーンで観るのが良さそうだと感じていました。



それが実際に公開されると更に評価が高まってきて、どうせならIMAXでの臨場感まで楽しんでしまわなければ!と勇んで劇場に出掛けました。




《『国宝』のあらすじ》


任侠の一門に生まれ、 抗争によって父を亡くした喜久雄(吉沢亮)は、

上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)に引き取られ、

歌舞伎の世界へ飛び込む。


そこで、半二郎の実の息子として、生まれながらに

将来を約束された御曹司・俊介(横浜流星)と出会う。


正反対の血筋を受け継ぎ、生い立ちも才能も異なる二人は

ライバルとして互いに高め合い、芸に青春をささげていくのだが、

多くの出会いと別れが運命の歯車を狂わせてゆく…。


血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切り。

そのもがき苦しむ壮絶な人生の先にある“感涙”と“熱狂”。


「歌舞伎」という誰も見たことのない禁断の世界で、

激動の時代を生き抜きながら、世界でただひとりの存在へ―― 。







《国宝》と言われても数多くあれど、この作品で取り上げられているのは歌舞伎界における《人間国宝》のことで、それがモノであればずっと残っていくけれど、こと人間国宝となれば「生きる至宝」として尊ばれる存在。



もちろん誰でもなれるものでは無いし、皆がそこを目指すのかといえばどうなんだろう?という、絶対的ながらも曖昧な存在です。




【天賦の才を認められたキクオと絶対的な血筋に生まれたハンヤ】

歌舞伎の女形にハマっていたキクオは極道の組長である父親たちの前で歌舞伎の演目を演じたところを、たまたまお呼ばれに来ていた花井一門の長である半二郎にその才を見そめられ、そこで起こった抗争事件によって父親を亡くしたキクオは半二郎に引き取られます。



花井家にはキクオと同い年で、小さな頃から後継として父親に修行をつけられていたハンヤが居て、突然家庭内に入ってきたキクオのことが初めこそ気に入らなかったものの、互いに無類の歌舞伎好きであったことから兄弟のように仲良くなるのに時間は掛かりません。




©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会




それはきっと子供の頃からこの厳しい世界にいるハンヤから見ても、キクオの役者としての才がずば抜けていることを感じていたから。互いに切磋琢磨しながら一流の歌舞伎役者として舞台を共にするようになると更に2人は仲良くなっていきますが、やはり周囲はそんな2人を放ってはおけず、花井一門としての跡継ぎ問題や舞台での優劣がやがて2人の中を割いていきます。



しかしそんなストーリーは勿論ながら、とにかく2人の歌舞伎役者ぶりがすごい!


なんて言うと「普段から歌舞伎なんて見てないでしょ?」と歌舞伎好きな人たちに言われてしまいそうですが、見る目はなくとも伝わってくるほど歌舞伎役者そのものが演じているとしか思えない舞台ぶりに惹きつけられてしまいます。




©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会




やはりこの臨場感や迫力は大スクリーンでこそ観るべきで、3時間という上映時間の中で同じ演目が何度か演じられますが、その中だけでも2人の成長ぶりさえ感じられるようです。



やがてキクオは花井東一郎として一門を率いて行こうとしますが、ここで生まれ持った極道の血を取り上げられて邪魔が入り始めたり、キクオの元恋人の春江と逃げて地方での仕事で食い繋いでいた半弥が名門の血を盾に戻ってくるとすぐに持て囃され、今度は東一郎自身に居場所がなくなっていきます。




©吉田修一/朝日新聞出版 ©2025 映画「国宝」製作委員会




そんな2人を引き立てたり指導したりする両親と共に人間国宝の小野川万菊がその道の先を行くものとして、折ごとにキクオに大切な何かを伝えているように感じます。やがて2人の仲は再び繋がっていきますが、半弥には芸以外の血縁までもが絡み始めます。



ただの歌舞伎好きだけなら演じられるだけで楽しいはずだったのに、やがて2人は楽しさだけではない大きなものに流されていく運命に翻弄されていく。そしてその先に待っているものが何なのか?はぜひスクリーンで観て、自分なりに受け取って欲しいと思います。





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