》ヒンドゥの神々がアメコミ風の世界に：『ブラフマーストラ』鑑賞記

神々の力（アストラ）を持って生まれた人間たちが、究極の兵器《ブラフマーストラ》の発現を止めようとする３部作の１作目、シヴァ編を観た感想をブログに。

昨日ご紹介した『RRR』は人間を神さまのようになぞらえて描いた物語でしたが、こちらは古代ヒンドゥー教の神々の世界をまるでアメリカンコミックの様な世界観で現代に置き換えたストーリー。その中でヒーローとヒロインの恋物語も描きつつ、当然ながらボリウッドダンスと最新のVFXによるアクションも楽しめるという内容ぎっしりの作品になっています。

《『ブラフマーストラ〜パート１Siva』のあらすじ 》

ムンバイに暮らす天涯孤独の青年シヴァは、見知らぬ科学者が何者かに襲われる不思議な幻視を見る。

その理由を探るうちに、古 代ヴェーダの時代から秘密裏に受け継がれる神々から授かった武器“アストラ”と、その中でも最強とされる“ブラフマーストラ”の存在を知らされるシヴァ。

ブラフマーストラが目覚めることで世界は地獄と化す…。

しかも彼は、それらの武器を守護する役割を担っていた人物の息子であり、偉大なる火の力を宿す救世主だった！

果たしてシヴァは自らの運命を受け入れ、世界を救うことができるのか？

アメコミのマーベルやDCが数多くのコミックをユニバースとして一つに纏めたように、このブラフマーストラは古代のヒンドゥー教の神々の世界を「アストラバース３部作」として描く中の第一話がシヴァの物語。主演でシヴァ役のランビール・カブールと、『RRR』でもヒロインの一人として出演していたイーシャ役のアーリヤー・バットは私生活でも恋人同士で、この映画での共演を機に昨年結婚したそうです。

【インドの神々の世界観を知っているとニンマリしてしまうシーンが満載】

まずはなんといっても天涯孤独で父親の記憶はなく、母親との凄絶な思い出だけを抱えて生きる青年シヴァ。父親が誰か分からないせいで苗字はないその名前こそ、ヒンドゥー教の３大神にして破壊・再生を司るというシヴァ神を現しています。そして物語の始まりとともに出会って恋に落ちるイーシャは、その名をシヴァ神の第２の妻パールバティーから取っているとシヴァに告げ、二人の出会いをさらに運命的なものに繋げます。

さらには二人のデートシーンではバラナシーでガンジス川の船に乗るシーンや、シヴァの象徴であるリンガに祈りを捧げるシーンも描かれており、思わずニンマリしてしまいます。

シヴァとパールバティーの姿を描いた絵画とその象徴であるリンガ

この物語は古代の神々が、この世を破壊し尽くす危険な力を発現させないよう三つに分けて隠した《ブラフマーストラ》を守ってきた組織ブラフマーンシュが、それを集めようとする謎の女ジュヌーンから攻撃を受けていくところから始まります。シヴァは夢の中でブラフマーンシュの一人が襲われるのを幻視してしまいます。子供の頃から炎を引きつけてしまうのが「アグニ」と呼ばれる炎を操る力で、ブラフマーンシュたちに備わる神の力だというとを知ります。

神話ではアグニ神はやがてルドラ・シヴァに発展し、やがてシヴァ神になるという説があり、この作品の中でもシヴァの成長していくそんな姿が明かされていくに従ってまたニンマリ。そしてシヴァを助けるブラフマーンシュの能力者たちの中には、シヴァが乗ると言われる牛の力を持った者や猿の力を持つハヌマーンの能力を使う者などが出てくる度にまたまたニンマリ。

イケオジな名優シャー・ルク・カーンがハヌマーンの力を駆使して戦います

【マーベルなどと比べずに神話の世界観で楽しむべき】

どうしてもマーベルやDCのシネマティックユニバースと比べてみると世界観の深まりは薄い様に感じてしまうかもしれませんが、幾つものヒーローを重ねて描くアメコミの世界観にはなかなか敵いません。でも考えてみればアメコミの方が古代神話を基に描かれているキャラも多く、どちらかといえばこちらの方が本家といっても良いのではないでしょうか？

もちろんVFXだってハリウッドがインドに発注することも多いくらいなので、当然ながら劣ることのない迫力ある映像だし、この後に続く『ブラフマーストラ〜Debe』でシヴァがどう成長するかや、そもそもシヴァの出自の謎がどう描き出されていくのかも楽しみ。

そして何よりも最も強い力を持つものがなんなのかを、ぜひスクリーンで確かめてみてくださいね。

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