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おざわやの代表のブログです

【東西冷戦の最中に国の威信を掛けて戦ったのは、法を護るプライドと優しさだった:映画『ブリッジ・オブ・スパイ』鑑賞記】

2020.06.27

民主国家として法を護る弁護士が国から課されたのは、国の威信のために後ろ盾なく東側と交渉すること。そんな無茶振りに応えたドノヴァン弁護士の5年間に渡る静かな闘いを基にした作品です。



 スパイアクションというと「007」や「ボーンシリーズ」の様なアクション映画を思い浮かべる方も多いんじゃないでしょうか?でも実際にはこの作品の様に静かに水面下で動いて消えていくものなんじゃないだろうか?と思わせる緻密なストーリー、実際に起こった事件を基にした『ブリッジオブスパイ』を見ました。まずトム・ハンクス主演と聞いて「スパイ役は似合わないな」と思ってみたら、やはりトム・ハンクスの役柄は国選弁護人としてソ連から潜入していたスパイのルドルフ・アベルを弁護するジム・ドノヴァン役。それはアメリカが法治国家としての威信をかけて、スパイでさえ法の下に裁かれることをアピールしたいだけの役目でしたが、彼はアベルの人間性に触れたことから真摯に弁護して、死刑ではなく終身刑を勝ち取ります。それがもとで家族共々世間のバッシングを受けるジム。そんな所からジムの正義感というか法の番人としてのプライドが垣間見えます。しかしそれはもっと大きな事件の前触れでしかありませんでした。




【あらすじ】



 1957年、ニューヨークの法律事務所の協同経営者のジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ブルックリンで諜報活動を行なっていたソ連のスパイ、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)の弁護を依頼されます。敵のスパイを弁護することで家族すら危険に晒すことになることを危惧したものの、真摯に弁護。その結果、敗訴はしたものの最高裁まで争って死刑判決を回避。アベルは無期懲役に処されたことから、ジムは国中からバッシングを受けることになります。



画像はvogue.tokyoより


 その5年後、今度はソ連上空で諜報活動していたU2偵察機が撃墜され、捕まった搭乗員のゲイリー・パワーズと服役中のルドルフ・アベルを交換する交渉をCIA長官から依頼されます。とはいってもジムが国を代表するわけではなく援護も最低限な中で、西ドイツでのソ連との交渉に向かいます。ところがそんな時、ちょうどベルリンの壁によって東西に分けられようとしていた最中に、スパイ容疑でアメリカ人の大学生フレデリック・プライヤーが捕まってしまいます。パワーズの救出が絶対条件のアメリカと、アベルがどこまで情報をバラしたかも気になるソ連、そして国としての主権を主張したい東ドイツまでもがアベルとの交換を要求。孤軍奮闘のジムは最後の交渉のために「橋」へ向かいます。







【東西冷戦って知ってますか?】

 ふと考えてみれば、今の若い方にとって「東西冷戦」というのは既に大昔の話かも知れませんが、それはアメリカと当時のソビエト連邦が核軍備の抑止力によって睨みあっていた頃。資本主義と共産主義は世界中で時には衝突しつつも、こうした水面下での交渉や現場での譲歩によってギリギリの均衡を保っていました。それはベトナムであったり、現在も南北に分断されたままの朝鮮半島もそう。そしてこの橋の上でのスパイ同士の交換劇の2年後にも、キューバのカストロ政権打倒に失敗した捕虜を解放するよう交渉されていますが、ここに向かって交渉を成立させたのも実はこのジム・ドノヴァンだったという、本当に小説の中のヒーローのような人です。


 このストーリーの中で描かれるジムは家族を大切にしつつも、アメリカ人であること、そして自由憲法に基づく法の番人であることを大事にしているように思います。そして何よりヒトとしての優しさを第一に考えられる人であったことが、それぞれの交渉で相手に伝わったのが成功の秘訣だったのではないでしょうか。




現在の世界はこの当時よりも経済によって複雑に絡み合っていて、右か左かといった単純な関係性では語れなくなっています。でもだからこそ今、このジム・ドノヴァンのようなヒトが求められているような気がしてなりません。





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