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》家族の愛と悲劇、そして祈り:映画『ハムネット』鑑賞記

2026.06.29

田舎のラテン語教師だったシェイクスピアが、その家族の愛と悲劇の中で紡ぎ出した戯曲『ハムレット』に込められた、その深い悲しみと癒しを描いた作品の感想をブログに。




このストーリーは世界に名の知れた戯曲作家のウィリアム・シェイクスピアの代表作である『ハムレット(ハムネット)』が生まれた背景にあった、シェイクスピアとその家族に起こった史実を基に描かれた同名の小説を、『ノマドランド』でのアカデミー受賞監督であるクロエ・ジャオが撮り下ろした作品です。



この作品で物語を通してアグネスとしての目線を演じたジェシー・バックリーは娘であり妻、そして母としての熱演を魅せてゴールデングローブとアカデミーの主演女優賞を獲得。そして受賞こそなかったものの喪失感に苦しみ続ける静かな父の演技が、痛々しくも熱く胸に刺さるシェイクスピア役を『グラディエーター2』のポール・メスカルが演じました。







不朽の名作と言われる『ハムレット』ですが、正直これまでしっかりと見た記憶はなく日曜洋画劇場などで昔観た程度。「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ!」なんて台詞をウロ覚えしている程度だったので、このストーリーにはまるでピンと来ませんでした。



それでもそこにあった知られざる誕生秘話なんて言われると俄然興味が湧くし、しかもこれまで独特の世界観を描いてきたクロエ・ジャオ監督と共にどちらも名監督として知られるスティーブン・スピルバーグやサム・メンデスまでも製作に関わっていると聞いたら、そりゃあますます期待が湧いてしまいますよね。




【森で出会った2人が恋に落ちて幸せを掴むばかりだったはずが】

田舎の村でラテン語教師として暮らしていたウィリアム(シェイクスピア)はたまたま見かけたアグネスに惹かれ、森の中で会ううちに気持ちを確かめ合い、やがて結婚して子どもも生まれて幸せな家庭を築きました。



アグネスは母親から代々シャーマン的な血を受け継いでいて薬草の知識も豊富で、村人たちから「森の魔女」と呼ばれるくらいいつも森を彷徨っているし、3人の子供たちを産んだものも一人きりで森の中という人。どうやら双子の子供たちにもそんな能力が受け継がれているようでしたが、それがのちに悲劇を呼んでしまいます。




アグネスは代々シャーマン的な血を受け継ぐ「森の魔女」




そんなウィリアムは以前から書き綴っていた戯曲から作家を夢見て、家族を田舎に残したままただ一人ロンドンでの演劇活動をしていて、たまに帰るとそんな父親が大好きな双子の長男ハムネットはベッタリで、殺陣の演技を教えてもらうのを楽しみにしています。



いつか父親の戯曲で舞台に立つのが夢だなんて、ハムネット可愛すぎる!







ちょうどこの頃ヨーロッパはペストの蔓延に襲われていて、アグネスは一人で子供たち3人を守りつつ夫の帰りを待っていましたが、ある時身体の弱かった双子の次女が罹患。一緒に寝ていて死神の存在に気づいていたハムネットは父親との「家族を守る」という約束通り、妹の身代わりとなってしまいます。



ロンドンの父の元にもその知らせが届きましたが、急いで帰ったもののハムネットはすでに息を引き取っていて、その死を受け止めきれない二人はやがてギクシャクしていきます。




そんなウィリアムが完成させた戯曲をロンドンで発表




初め劇場のはじの方で冷たい目線を送っていたアグネスでしたが、やがてその舞台上に描かれているのが愛する息子の姿であることに気づいて惹きつけられるように舞台の最前列に進んでいくアグネスは、父親としてのウィリアムの悲しみと追悼の思いに気づきます。



美しい映像表現で知られるクロエ・ジャオ監督が紡ぎ出したこの物語は概ね母親の目線で描かれているように感じますが、ウィリアムがその舞台上に見送ってやれなかった息子の想いを載せていること、そして時折もう一人の目線を感じさせる映像が挟まれることで家族の思いが劇の終盤に向け高まり、昇華されていくようにも感じます。







家族の愛が交錯し、その愛ゆえに苦しみながら互いを思い合う。


そして舞台上でその想いを昇華させていった先に見えてくるもう一つの存在には、やはり同じく父親としての胸の痛みを感じざるを得ませんでした。きっと観る人の立場や状況で感じ方も変わると思いますが、またもう一度見直して確かめてみたいと思える、そんな作品でした。





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