おざわやの代表のブログです
2023.12.07
『グラディエーター』や『ハンニバル』、そして『ブレードランナー』に最近では、『ハウス・オブ・グッチ』など大作ばかりを生み出してきたリドリー・スコット監督が、名優ホアキン・フェニックスを抜擢して制作された『ナポレオン』。当初は4時間越えというとんでもない作品と発表されましたが、公開されたのはナポレオンと出会う前のジョセフィーヌの生い立ち部分を省かれたという2時間38分でした。
それでも充分に長いし、もしかしたら途中でダレてしまうか寝てしまうかも?と思っていましたが全くそんなことはなく、最後まで興味深く見られたのは、戦いの中のナポレオンの強さとジョセフィーヌの前の彼の二面性、そして兵士たちを鼓舞し続けた彼のヒロイズムに魅了されたからだと思います。
1789年 自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。
マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、
天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り
皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。
最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、
フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。
冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――
フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく。
「英雄か、悪魔か」は日本のみのキャッチコピーのようで
フランス革命でのマリー・アントワネットの斬首刑に始まる物語。
その後荒れたフランス国内での戦いで功績を上げていったナポレオンは、パーティーで見かけたジョセフィーヌに一目惚れ。戦いで夫を亡くしたという彼女を妻としてめとります。戦いでは非情であり、綿密な作戦で敵を一網打尽にしていく彼も、ジョセフィーヌの前では「ただの男」になり、ジョセフィーヌが浮気していると知れば戦地から帰ってしまうほど。
でも彼女の浮気を咎めつつも、すぐその後で「私がいなければあなたはただの男でしかない」と言われると「僕はただの男…」とすぐへりくだってしまうほど彼女にぞっこんなナポレオンの情けなさや、母親に対する想いが溢れるシーンもあり、もしかしてマザコン?なんて思ってしまいます。しかし結局跡継ぎを産めなかったジョセフィーヌと離婚されてしまいますが、それでも彼女の元へ通い詰める彼の姿には英雄の片鱗すらありません。
© 2023 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
でも戦地での彼はまさに「英雄か、悪魔か?」という印象を敵味方の隔てなく、どちらからも受けていたようにさえ感じます。それは敵から見れば悪魔的な強さと非常さを、そして味方から見ればもちろん英雄的にも見える反面、勝てる見込みの薄い戦いにも味方兵士を鼓舞して送り出し、それが負け戦となればさっさと引いていく非情な姿は、味方からも悪魔のように見えていたのではないかと。
フランス革命からの混乱を治めて皇帝となると、今度は友好関係を築かない周辺国にまで戦いを挑んで、大砲を有効的に使った戦法で完膚なきまでに倒していくナポレオンの強さったら!これらの戦闘シーンでは8000人のエキストラを動員して撮られたそうで、リドリー・スコットならではな圧巻の迫力を見せています。しかしついにモスクワ遠征で大敗すると、皇帝の座を降ろされてエルバ島に追放されてしまいます。それでも翌年には1000名足らずの兵士を引き連れて島を脱出、途中引き止めようとした同盟軍側の兵士までも引き入れつつパリへ進軍を開始します。
こうして仲間を増やしていくナポレオンは恐ろしいほどのヒロイズムを発揮して、それこそ英雄というよりは悪魔的。
© 2023 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.
そのままパリまで進軍すると市民たちからも「皇帝万歳!」の声で迎えられますが、喜び勇んで会いに行ったジョセフィーヌはすでに病から命を落としており、すっかり力を落とすナポレオン。その後すぐ起きたワーテルローの戦いでは、全ヨーロッパの軍勢を相手にしてなす術もなく破れますが、この戦いも何だかジョセフィーヌを失った弔い合戦だったのではないかと思えてしまうほどです。
「私がいなければあなたはただの男」とのジョセフィーヌの言葉が、そのまま現実となってしまったように感じます。そしてそんなナポレオンは島流しにされたアフリカ沖のセント・ヘレナ島で最後を迎えますが、その最後に残された言葉に彼の思いが溢れているように感じられてなりません。
果たしてナポレオンは英雄だったのか、悪魔だったのか?それともただの男だったのかは、ぜひ映画館で確かめてみてください。
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