》犯罪は絶対ダメ！なんだけど何故だかあったか〜い♡：映画『ゴヤの名画と優しい泥棒』鑑賞記

私利私欲の為ではなく、孤独な老人たちのために犯した犯罪と優しい嘘がこんなにも素敵な物語になって、実際起こった犯罪ながらこんなに胸を温かくしてくれるなんて！という映画の感想をブログに。

一人の《想いある老人》が犯した大犯罪が、イギリスの世論を二分するような大騒動になったという実際の事件をもとにしたストーリーなのに、見ればなぜかその作品を見ると笑ってしまうし思わず涙してしまうって信じられますか？

そんな2020年の作品を演ずるのはイギリスを代表するジム・ブロードベントとヘレン・ミレンという２大アカデミー俳優に、『ダンケルク』で手に汗握る戦闘シーンを演じたフィン・ホワイトヘッド。そして監督は人気作品『ノッティングヒルの恋人』のロジャー・ミッシェルですが、この作品を最後にして亡くなってしまったそうで、これが遺作となってしまいました。

《『ゴヤの名画と優しい泥棒』のあらすじ》

世界中から年間600万人以上が来訪・2300点以上の貴重なコレクションを揃えるロンドン・ナショナル・ギャラリー。

1961年、“世界屈指の美の殿堂”から、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」が盗まれた。

この前代未聞の大事件の犯人は、60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。

孤独な高齢者が、TVに社会との繋がりを求めていた時代。彼らの生活を少しでも楽にしようと、

盗んだ絵画の身代金で公共放送（BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。

しかし、事件にはもう一つの隠された真相が・・・。

当時、イギリス中の人々を感動の渦に巻き込んだケンプトン・バントンの“優しい嘘”とは−！？

【しがないタクシー運転手の老人が世間を二分する大犯罪を犯すなんて】

今もし美術館からゴヤの名画が盗まれたとしたら世界的な話題になるだろうし、その犯人が捕まれば厳罰を受けるだろうことは誰も疑いはしないでしょう。でもその犯人が一人のしがない老タクシー運転手だなんて誰も信じないだろうし、その「身代金」を年金暮らしの老人のテレビ受信料に充てようだなんて考えもしないでしょう。

実際にそんな事件を起こしたのはロンドンで年金を貰いながら運転手をしていたケンプトン・バントン。妻と息子の3人暮らしの彼はBBCが要求する公共放送受信料に反対してビラ配りをしたり、BBCが映らないようテレビを改造して支払いを拒否。年金暮らしの老夫婦から唯一の楽しみであるテレビを奪わないようにと普段から活動しているような老人。

妻のドロシーは家政婦をしつつ次男ジャッキーとの3人の暮らしを支えながらも、ジムの活動には受信料くらい払えばいいと批判的。

街角で次男ジャッキーと署名運動に勤しむジムと、自宅に隠された「ウエリントン公爵」

事件は1961年、アメリカ人実業家が14万ポンドで買い取ったフランシス・デ・ゴヤの名画「ウエリントン公爵」を国外に出させないため、イギリス政府が同額で絵を買い取ったことに始まります。名画を守ったことを記念して、ロンドンのナショナル・ギャラリーに演じされていたその名画が一夜にして消え、その犯人からは身代金として14万ポンド支払うように要求が出されます。

そんな名画が自宅のクローゼットに隠されているとはつゆ知らず、いつもよりも明るく振る舞うジムと楽しく暮らすドロシーでしたが、長男夫婦が転がり込んだことをきっかけに事件が明らかとなり、夫のジムが盗難犯として裁かれることになります。

事件を誤魔化すように明るく振る舞うジムは結局、家族に迷惑が掛からないようにと《借りていた絵》を返しにいきます

いくら1961年の当時とはいえこの盗難事件だけでも信じられないのに、《国際的な犯罪組織》と思われていた犯人がこんな老人だったとは、関係者だけじゃなく一般市民も相当驚いたことでしょう。さらには陪審員裁判になるとジムは盗難を否定して「借りていただけ」と言い張る始末で、そんなジムを応援していた人たちと批判的な人たちまでを含んで世間を二分する騒動に広がっていきます。

しかもこんな大犯罪なのに、まるでコメディー映画の『ピンクパンサー』や『ルパン３世』でも見ているように笑ってしまったり、思わずホロっと涙を誘ったり。そしてさらに驚いてしまうような判決からは清々しさを感じてしまったりするから、事実は小説より奇なりって本当に感じます。

無事帰った公爵のおかげか？イギリスのテレビ受信料は2000年に無料化されたそうです

最後にはジムとドロシーの抱えていた心のわだかまりまでもが溶けることになりますが、そんな事件の結末はAmazonプライムかU-nextで見られますので、ぜひこの作品で確かめてください。心が温ったかくなること請け合いですよ〜。

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