》本当に大切なものを考えさせられる：映画『あの頃輝いていたけれど』鑑賞記

元トップアイドルグループから転落した男が、自閉スペクトラム症の少年とセッションして気づいた、本当の自分と自分を大切にするということ。

若い頃は皆んな色々な夢があったり、それを掴むためなら好きなことに遠慮なく打ち込めたりもする。でもそんな中で見失っている大切な自分って、無くなって初めて気がつくものかも知れません。このストーリーは自分が守っていたつもりだった存在に、実は守ってもらっていたってことを認めて、本当の自分に戻れた男の物語。

映画を見終わって始めて、この野暮ったい邦題がピッタリだと思った、2022年のNetflix作品です。

【この作品のあらすじ】

20年前トップアイドルグループのステレオ・ドリームのメンバーとして人気絶頂だったヴィンスは、その後一人で作曲活動を続けていたもののどこのライブハウスでも演奏させてもらえず、食うものにも困るような極貧生活。ある時広場のベンチでキーボードを弾き始めると、邪魔するようにスティックでリズムを刻む少年スティーヴィーと出逢います。初めはバラバラだった即興のリズムをアンバーが合わせ始めると、周囲に人が集まり始め、SNSに投稿されたその動画はバズります。周囲に認められなかった二人が求めあった時、その音楽はホンモノの輝きを魅せ始めますが…

【『あの頃輝いていたけれど』の感想】

ヴィンスは今でこそ冴えないオッサンですが、その昔はBTSとかバックストリートボーイズのような絶大な人気を誇ったトップアイドル。ある時グループと対立する事件があり、今では一人で作曲活動しながら暮らしているものの全く売れなくて、落ちぶれたアイドル扱いです。スティーヴィーは母親アンバーと二人で暮らしていますが、生まれつき自閉スペクトラム症を患っていて、得意なドラム以外では他人とうまく交流ができません。ここまで物語を見て可哀想なスティーヴィーの成功する物語かと思っていました。

スティーヴィーは出演させてくれるライブハウスを探して回るヴィンスを付けて歩き、ヴィンスが弾く彼の作ったスローな曲に勝手に割り込んで、ジャムセッションを挑みます。初めは邪魔だと思っていたヴィンスも、次第にスティーヴィーが刻むリズムが面白く感じて合わせてみると、そこから素晴らしい曲となってスティーヴィーをメンバーに迎えたいと彼を探します。そんなスティーヴィーは母アンバーに、彼が生まれるまで打ち込んでいたダンスをまた初めて欲しいけど、暮らしの大変さから聞く耳持たず。そして自立のための音楽セラピーグループで三人は揃い、それから彼らの曲作りが始まります。

アンバーはヴィンスがただスティーヴィーを利用して、彼を傷付けるんじゃないかと過保護に感じるほど警戒しています。でもステージのスティーヴィーの楽しそうな様子を見て嬉しくなったのも束の間、観客とのトラブルを起こしたヴィンスは出入り禁止になり、それから会えなくなる二人。でもそのトラブルはヴィンスが昔救えなかった弟をスティーヴィーに重ねてしまったからで、彼を守ろうとした結果でした。

ヴィンスは元のメンバーからの出演要請を受けますが、スティーヴィーを守ろうとしたことで弟を一人で死なせてしまった自分の過去と向き合います。アンバーもスティーヴィーを守ろうとするものの、それによって自由に羽ばたけないスティーヴィーはヴィンスを求めた。きっとスティーヴィーは偶然じゃなく、わざとヴィンスにジャムセッションを持ちかけたんじゃないかな。

そうして迎えたラストセッションはもう大号泣！いつものフィルマークスではそんなに評価高くないけれど、ボク的にはかなり高めな4.1ポイント。ラストでもその後の姿は描かれていないけど、その結果はきっと観た人の心の中にあるんじゃないかな？

それは「あの頃輝いていたけれど」の先に繋がる言葉ともきっと同じはずです。

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