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おざわやの代表のブログです

【階段が現すのは格差か、心の奥なのか?:話題の韓国映画『パラサイト』鑑賞記】

2020.03.02

 最近ボク自身も韓国のドラマや映画をよく観るようになりましたが、ストーリーの面白さに俳優の演技力も重なって、楽しんで見ることが出来る作品が多いように思います。特にこの『パラサイト〜半地下の家族』はアジア作品としてアカデミー脚本賞を始めて取ったという事で話題になっていますが、どんな部分が受賞に繋がったのかも気になっていました。

 ボク的には邦画は残念ながらまだまだ楽しめる作品が少なくて、この『パラサイト』のように世界で評価されるような作品がもっと増えてくれば良いなと、今回の受賞に刺激を受けて欲しいとも思っています。



【あらすじ】

 事業を起こしては失敗ばかりだけど無計画で楽天的な父親キムギテクとそんな檀那にきつく当たる母親のチュンスク、大学受験に失敗してばかりの息子ギウと美大志望ながら上手くいかない娘ギジョンの四人家族は、ピザ屋の箱を組み立てる内職などだけで生計を立てる貧しい家族。彼らが住んでいるのは陽も当たらず下水の流れが悪く、ベンジョコオロギがうろつく家賃の安い【半地下】の部屋。何とかそんな生活から抜け出したいとは思いながらも、そのきっかけを掴めず毎日ひもじい生活に耐えていました。

 ある日ギウは友だちのエリート大学生ミニョクから、留学中の家庭教師の代役を頼まれます。そこで向かったのはIT企業の社長パク・ドンイク一家の住む豪邸で、その娘ダヘの英語教師として信頼を受けたことから、妹ギジョンまでも赤の他人として美術の家庭教師に推薦し、それをきっかけにして数々の悪巧みから、パク家に入り込んでいくキム一家。そのまま順風万歩かと思っていた彼らですが、次第に隠されていた秘密が明らかになっていったことから、思わぬ展開になっていくというストーリーです。





【経済格差と人の内面に隠されている顔の落差がよく描き出されたストーリー】

 まずアカデミー賞に選ばれたという部分は、やはりよく言われていることですが、社会的な問題の【経済格差】が描かれていることだと思います。これは韓国だけではなく自由経済の世界に共通の問題ですが、それを彼らの住んでいる【半地下の家】に象徴させ、そこから抜け出せない格差を作品の中で炙りだしていきます。電話代も払えないから他人のワイファイを頼りにしたり、大学の在学証明を偽造したり。小金を稼ぐ為の工夫はしても、本格的に抜け出すための計画性は無いなど、彼らがそこを抜け出せそうには全く思えません。


 そしてもう一つ、そんな経済格差を象徴するのはパク家とキム家の間の階段。

大雨の中を家に逃げ帰っていくキム一家。降りても降りても続く階段がまるで奈落の底に降りていくようで、次第に綺麗だった街並みはゴミだらけに変わり、やがて辿り着いた彼らの部屋は流しきれない下水に沈みかかっています。そんな下水の中から大事なものだけ持ち出して避難所に向った彼らは、これからどうすれば良いのか途方に暮れてしまいながらもどこか他人事のよう。


 そしてそんな階段は豪邸なパク家の中にも数多くあり、そんな様々な階層を分ける階段を舞台に事件が起こっていきます。でもそんな階段が描き出したのは経済格差だけじゃなく、人の心の奥に隠されている情念や悲しみもあるんじゃ無いかって。

 誰にでも心の奥には地下室のような場所があって、その奥には隠されている想いや感情がある。そんな隠されていたものが外に出される恐ろしさや苦しさを、半地下の家や地下室が現わしていたように思いました。いかに抜け出そうとしても、その家に染み付いた臭いはヒトにも染み付いて抜けない。そして次第にその臭いに飲み込まれて沈んでいくような、そんな恐ろしささえも感じる作品でした。





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