》”ロケットマン”は新たなクリスマス名物になり得るか？：『セキュリティー・チェック』鑑賞記

クリスマスのロサンゼルス空港で偶然テロ事件に巻き込まれてしまった運輸保安局員の奮闘ぶりを描いた当作は、果たして新たな”ジョン・マクレーン”になり得るのか？というNetflix作品の感想のブログ。

かつてクリスマスに必ず事件に巻き込まれる男といえば、ブルース・ウィリス演ずる刑事ジョン・マクレーンでした。その一作目の『ダイ・ハード』では、別居中の妻に会うためロサンゼルスにやってきたジョンが大規模な人質強盗事件に巻き込まれてしまうストーリーで大ヒット。その後は2・3・4.0と毎度クリスマスに運の悪い男として定着し、５作目の『ダイ・ハード/ラストデイ（2013年）』で完結しました。

特に『ダイ・ハード２』ではクリスマスのダレス国際空港をジャックされ、妻を迎えにきていたジョンがたった一人でそのテロ集団を迎え撃つというストーリーで興行収入2億4千万ドルの大ヒット！その後もクリスマスといえばマクレーン（＝ブルース・ウィリス）というイメージがしっかりと定着しました。

好戦的な性格が事件を引き寄せているようにも思える（ダイハード２）

今作の主役は彼ではなく『キングスマン』シリーズで秘密諜報員エグジーを、そして『ロケットマン』では見事にエルトン・ジョンを演じきったタロン・エガートン。その《クリスマス〜空港〜テロ犯〜そこに巻き込まれる無関係の男》という馴染みの構図に期待してしまうのは、かつての大ヒット作に重ね過ぎでしょうか？

《『セキュリティー・チェック』のあらすじ》

クリスマス・イブにロサンゼルス国際空港で働く運輸保安局員のイーサンは

ひょんなことから極悪非道なテロ計画に巻き込まれてしまう。

謎の男たちはセキュリティ・チェックをすり抜けて

ある荷物を機内に持ち込みたい。

言うことを聞かなければ、恋人で

妊娠中のノラを殺すと脅迫されたイーサンは・・・

無線のみで姿の見えない敵に操られるイーサンは恋人を救えるのか？

この作品の原題は『Carry on』であり、珍しく邦題『セキュリティー・チェック』の方がイメージし易くぴったりに感じました。

【人生で色々と空回りしていた男に訪れたのはピンチか、チャンスか？】

夢だった警察官への採用試験に落ち、好きになった女の子と一緒に働こうというだけで空港の運輸保安局員になったイーサン（タロン・エガートン）。恋人のノラから妊娠したことを打ち明けられて焦りつつも、一念発起して上司に昇進のチャンスを貰えるよう直談判。飛行機に搭乗する前の持ち物チェックで実力を認められようとします。

ところが交代した仕事仲間のことを脅そうと準備していたテロ犯に、「ノラの命が惜しければ仲間の手荷物を検査せず通せ」と脅されてしまいます。イヤホンで指示されるばかりで姿の見えない相手ながら隠れて警察に通報しようとしてもバレてしまい、やっとのことで空港警備員に怪しい男を調べるよう頼むとその警備員は殺されてしまい、次第に打つ手がなくなっていくイーサン。

正義感は人一倍なのに上手くいかないイーサン〜Netflix

犯人との通話から聞こえる背後の音で謎の男を特定したイーサンでしたが、あらゆるカメラをハッキングされている事が分かって身動き取れません。この辺りの閉塞感や動きの読み合いは、電話からの声だけで誘拐犯を追う『ギルティー（2018年）』のような緊迫感があって、なかなか手に汗握ります。

イーサンからの通報で異常に気づいたロサンゼルス市警のエレーナは、それが自身の捜査上に浮かんだロシアの毒物兵器ノビチョクと関係があると踏んで、空港を一部閉鎖。まずはイーサンから話を聞こうとしますが、ノラの命を握られているイーサンは時間稼ぎしながら空港内を走り回ります。

ハッキングした防犯カメラで監視する男〜Netflix

イーサンが荷物チェックで見たのは大量の爆発物らしきものが詰められたカバンで、それが飛行機に積まれてしまえば大勢の乗客の命が奪われてしまうと、ノラと子供の命との板挟みに悩むイーサン。彼と同じように脅されていた男は、恋人の命を救うためとイーサンを殺そうとした挙句に亡くなってしまい、ますます迷います。

父親の犯罪歴が元で警察官の採用試験に落ちてしまい、空港の冴えない仕事には身が入らず遅刻ばかりだった彼の人生は子供を授かったことを機に切り替わり、さらには事件に巻き込まれた事から目まぐるしく動き始める。銃で犯人もろくに撃てなかった彼が多くの命を救うという使命感に駆られたことで、怖がらずに前に進むことを選び始める姿にはグッとアガります。

愛は強し、されど父親はもっと強し〜Netflix

かつてのジョン・マクレーンはそもそも敏腕刑事でしたが、この事件によってその素養を見出されて伸ばしていくイーサンの姿に、ここからまた新たなクリスマス男が誕生してしまうのでは？と思ってしまった、しっかり楽しめたアクションスリラーでした。

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