》まずは”動脈乖離”という恐ろしい存在を知っておくこと

ほとんどの方が聞いたことがあるであろう動脈乖離（どうみゃくかいり）という恐ろしい症状を、実際に体験した自分が語ることでより多くの人に注意喚起したい。そう思って改めて振り返りながら伝えてみるブログです。

2023年に落語家の笑福亭笑瓶さんが大動脈解離で亡くなられたこともあって、この病気の存在自体は割りと多くの方が知られているのではないでしょうか？急性症状が起こった場合、救急車で運ばれても６割程度は命を落とすとも言われる、恐ろしい症状です。

具体的にいえば、心臓から身体中に血液を送る直径15〜20ミリもの太さの【大動脈】の内側の膜が傷ついて、外側の膜との間に血液が流れ込むことで内膜と外膜が剥がれてしまう症状です。そこに出来た瘤が破れたら体内での大出血、瘤が動脈の血流を阻害すればその先の組織が壊死してしまい、どちらにしても危険な状態です。

偽腔（ぎくう）に血が流れ込んで膨らみ、血管が裂けてしまう

私自身４年前に突然起こった腰のあたりの痛みから、救急外来で判明したのが動脈乖離。

前から腰痛持ちだったので「そのうち治るだろう」と安静にしていましたが、以前お世話になった方がこの症状から亡くなられてしまったことと、つい２年ほど前に同級生がやはり自宅で発症。彼は助かったものの、その時の痛みや状態を聞いていたからこそ「これはもしや？」と疑って検査してもらったからこそ、あの時助かったんだと思います。

先日お世話になっているお客さまのご家族が、まだ40代という若かさでこの症状で亡くなってしまったというお話を聞いて、身近でこうした体験を聞いていないと僕のように気づけないかも知れない！と思いました。

今日のブログは改めてそんな体験をお伝えしたいと思います。

【その時に感じた痛みは初め小さなものでした】

僕の場合、動脈乖離が起こったのは背中の大動脈から枝分かれして腸に血液を送る動脈が乖離する【上腸間膜動脈乖離】という、それほど多くない症例のようでした。心臓近辺の大動脈で起こるものほど危険ではないものの、そのまま放っておいたら【虚血性腸管壊死】という症状に進んでいた可能性もあり、やはり危険な状態でしたと診断してくれた心臓外科の医師から説明を受けました。

その日は寒い日で、現場作業を見守ったあとで店に戻って事務仕事をしていましたが、トイレに入った時に背中の腰のあたりの筋が攣ったように刺しこむ感じで痛み、しばらく便座に座ったまま治るのを待っていました。そして「きっと寒かったから腰の辺りがこわばってしまったんだろう」と考え、自宅に戻ってホットカーペットに横たわって毛布を掛けて安静にしていました。

でも寒気がするし、6時間ほど経ってもだんだん酷くなるので「おかしい」と思い、救急病院へ。

救命救急のベッドでの血圧は上が155程度

当時は確かに血圧は少し高めだったかも知れませんが、普段から体調には不安がなかったので定期検診も受けずじまいで、特に何かを自覚するような状態ではありませんでした。同じ症状で苦しんだ同級生の場合は普段から200を超えるような血圧だったというし、正直こんな状態で起こるの？と驚いてしまいました。

救命救急に向かった時はかなりの痛みに冷や汗が出る感じでしたが、エコーやCTで検査しつつ痛み止めの点滴を打ってもらったことで元気になり、その検査結果も「特に異常は見られない」という状態で自宅に帰ろうかと思っていたほど。でも若い医師が「折角だから、もう少ししっかり見られる検査もやっておきましょうか？」と聞いてくれ、その造影剤でのCT検査でやっと判明したのもほんの小さな変化でした。

看護師さんたちの誰もが「運が良かったね！」というほどの状態でした。

ネット上でお借りした重度の上腸間膜動脈乖離のCT画像（逆トの字の部分）

前述のお客さまのご家族の場合は、夜になって胸の痛みを訴えていたそうで「しばらく休むわ」と寝ていたところ激痛で倒れて動けなくなってしまったとか。動脈乖離は心臓付近や背中、それに首の辺りでも起こる可能性がある症状なので、血圧が高い人ならもちろん、それほど高くない人でも起こる可能性があるという事を知っておくだけでもいいと思います。

もしも背骨沿いに上下に伸びる大動脈の辺りで、普段感じたことのない痛みが起こった時にはまず初めに疑ってかかった方が良いくらい。そしてもし激しい痛みなら決して患者を動かさず、とにかく早めに救急車を呼んで一刻も早く治療を受けることが肝心です。

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