おざわやの代表のブログです
2023.09.14
多くの皆さんにとって「仏教」というものは、生まれた時からいつの間にか身の回りにあったと思います。
でも実際に仏教にはどんな教義があって、そもそも大切にしているものは何なのか?といったようなことまで考える人はほとんど居ないのではないでしょうか。ところが欧米では経営者やリーダーたちに、仏教そのものというよりもヨガやマインドフルネスといった仏教にも通ずる部分が見直されているし、そもそも仏教が生まれた国でありながらその後にイスラム教によって淘汰され、今ではヒンドゥー教が大多数を占めるインドでも少しずつ仏教が見直されています。
先日も宗教の教義や考え方の違いについてブログに書きましたが、仏教が最も他の宗教と違うのは「与えられるものではなく自分の中に全てある」ということ。他の宗教では預言者が神の意思を伝えて教えるものがほとんどですが、仏教では「そもそもある」ということを悟り気づくことが本質の一つではないかと思います。
だからこそ一流のアーティストやスポーツ選手にまで認められているのではないでしょうか?
ヨガも自分の中にあるものに気づくための方法の一つ
でも逆に元々身の回りに仏教がある日本人にとっては、ただ法事だ葬式だと煩わしい儀式としか思われていなかったり、ヨガなんて体操の一つとしか捉えられていないと感じることもあります。逆に我々がよく知っているものから、仏教というものの概念を捉え直すキッカケになればと思って書く今日のブログは、三蔵法師から捉え直してみる仏教について。
まず三蔵法師というと漫画やSF映画の世界の「孫悟空」を思い浮かべそうですが、あの物語自体は相当に脚色されたものではありますが、実際に中国の唐からインドまで有り難いお経をいただきに行ったお坊さんの旅を元にしたものです。そのお坊さんの名前は玄奘(げんじょう)といい、徒歩や馬など使いながらタクラマカン砂漠やエベレスト山脈を越えて、世界最古のインドの仏教大学ナーランダまで行ったという実在の人物です。その時に657巻もの経典を書き写して持ち帰り、サンスクリット語で書かれたお経をすべて漢語に翻訳されました。
玄奘三蔵像(国立博物館蔵、ウィキペディアより)
孫悟空の中では「三蔵法師」と呼ばれていますが、実はそれは名前ではなくお坊さんとしての位を表すもの。
「三蔵」というのは三つの宝を得たほどの法力を持っているという意味で、ここで「三蔵」が指しているものは《経蔵(きょうぞう)・律蔵(りつぞう)・論蔵(ろんぞう)》という、仏教経典の中でも最も古いものです。まず経蔵とは仏教を開いたお釈迦さまが説いた教えであり、律蔵とはお釈迦さまがこの世を去られたあとを任された弟子たちが、仏教教団を運営し続けるために決めた規則。そして論蔵とはお釈迦さまの教えに対する弟子たちの解釈を残したものです。これによってお釈迦さま亡きあとも仏教を伝え説いて行こう残したものが、仏教経典です。
このとき初めにまとめられた原型を留めているのは上座部仏教に伝わる「原始仏典」であり、我々が目にするお経はその後に翻訳されて段階的な伝播によって少しずつ形を変えた「大乗仏教経典」です。そして2500年にも渡って多くの僧侶が伝えてきたこのお経の中には、「阿含経」と呼ばれるお釈迦さまが説かれた言葉に最も近いと言われているお経もあり、そのすべてに精通した僧侶に対して「三蔵」の名が付けられたそうです。
玄奘三蔵が旅の様子を書き残した「大唐西域記」とナーランダの僧院跡
仏教経典はあくまでお釈迦さまが書き残したものではなく、多くの教えを説かれていた弟子たちから集めて残されたもの。そしてもちろんお釈迦さま自体も誰かから伝え聞いたものではなく、自分の中に見出した仏性(ぶっしょう)を弟子たちに説いたのが仏教です。もちろん誰でもそんな仏性を見出せるものではないですが、お釈迦さまが残した教えを実践することで「気づき」に近づいていこうとするのが仏の道です。
それぞれの段階によってそこから得る教えは違うだろうし、誰もが悟りを得ることなんて出来はしないことながら、その教えに共感してお釈迦さまの弟子になった誰もが教祖と弟子ではなく、我々までも含めて段階の違いこそあれ「同じ道を歩く仲間」。そう考えると仏教はただの煩わしい儀式というだけではなく、自然の中に生きる我々人間全てが持つ自分の中にある仏性にも目が向かうのではないでしょうか。
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