》ゴッホの世界に痺れた休日

1人の収集家の想いがゴッホの作品を世界に知らしめたなんて。そんなへレーネさんとファン・ゴッホ家の収蔵品が展示された『ゴッホ展〜響きあう魂〜ヘレーネとフィンセント』は素晴らしい展示に魅入られました。

これまで絵画って「なんとなく良いな」と思うことはあっても、それほど深く知ろうとしたり「その作品のどこが好きなのか？」なんて考えたことはありませんでした。現代ならば誰ひとりとして知らないものはいない巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの絵だって、元は誰も見向きもしない作品で生涯に売れた絵はほんの数点といいます。でも絵の勉強を始めてから亡くなるまでの10年間に2000点以上の作品を残していて、そんな作品をヘレーネ・クレラー＝ミュラーという1人の収集家が彼の死後18年経って集め始めたことから世界に知られていった。

そんなストーリーを聞くとまた違った興味が湧きますよね？

そんな収蔵品を展示するクレラー＝ミュラー美術館と、ゴッホの親族が持っていた作品を展示しているファン・ゴッホ美術館から合わせて32点もの作品が揃ったゴッホ展に行ってきました。

名古屋市美術館で先週から開催しているゴッホ展は日時指定の予約と、余裕がある場合のみ当日券も販売されるってことで当然事前予約。ちょうど予定のなかった休日の昨日、最後の時間枠に行ってきました。今回で本物のゴッホの作品を見るのは初めてだし、ただのミーハー的な感じで特に何も感じずに終わるのかな？なんて若干思っていました。でも以前にウィレム・デフォーがゴッホを演じた『永遠の門〜ゴッホの見た未来』を観て、ゴッホという人の作家としての人生とその世界観を知ったことから、どうしても本物を見ておきたくなったんです。

この作品はゴッホが見ていたであろう景色や色を映像の中に映し出すという、これまでにないゴッホ視点でのストーリー。

生涯ずっと不遇だったゴッホが、いったい何を見て何を求めていたのか？そんなことを感じさせる映像を見たことで、余計にその世界観を身近に感じてみたくなったんです。作品は１階がクレラー＝ミュラー美術館の収蔵品でほぼ時代ごとに並べられていて、絵を学び始めた頃の習作やデッサンから見ると次第に色々な技法を得ていく過程が見て取れます。そしてゴッホといえばやはり向日葵や麦の黄色を思い浮かべますが、「レモンの籠と瓶」という作品からは黄色を幾重にも重ねて赤い輪郭を施すことで、そんな描き方を習得していったことが伺えます。さらにはへレーネが同時に集めていたミレーやルノワール、スーラなどの作品も併せて見ると、ゴッホがさまざまな作家の手法を真似て描くことで集大成としての大作を描いていったことも感じられます。そして２階にはゴッホの弟テオとその家族が持っていた作品を収蔵するファン・ゴッホ美術館からの「黄色い家」なども合わせ、最後に集大成としての「糸杉」を展示する構成が「盛り上げ過ぎやろー」って笑。

そんな中でボクがどれより魅入られた作品はこちら。

決して有名な作品じゃないけど、なぜか目を奪われてしまいました。

こうやって画像で見るのと違って、実際の絵の方がずっと鮮やかで鮮明。そして細かな人の動きまでしっかり描かれているのに、この作品はなんとほぼ一日で描き上げたといいいます。もちろん「糸杉」も素晴らしいし他にも何点か気に入った作品もありましたが、やっぱりこの葡萄畑から空の青へと湧き立つような緑と人の生活まで描きこまれているのが好きです。

こんな風に絵画でも作家の人生を描き出した映画のような展示だったら、もっと前から絵画の世界にも興味が湧いただろうなあって。

そんな風に感じたゴッホ展は４月１０日まで、名古屋市美術館で見ることができます。

ゴッホ展 〜響きあう魂　へレーネとフィンセント

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